空は青く。雲は白い。
広くはないけれど整備されたグラウンドから運動部のかけ声と蝉の鳴き声が響いている。
月光館学園高等部2年F組の教室には補習が終わった後も2つの人影が残っていた。
「じゅんぺー」
「んだよ」
窓の外を見ながら名前を呼んだ俺に対して、週刊漫画雑誌から視線をずらすことなく順平は答えた。
真剣に読んでいるわけではないようだが、ときたま、うわっとかつまんねーなーと文句を入れている
「俺さ、岳羽に何かした?」
「知らねえっつの。お前がしたんだろ?」
ページをめくりながら、今週は立ち読みにすればよかったと順平は愚痴る。
俺は四谷さいだぁのプルタブを開け、一口喉に流し込んでから答えた。
「・・・何もしてない」
「意味わかんねーって」
順平はめぼしい部分を読み終えたのか漫画を閉じて、やっと視線を有里に向ける。
自分の分の四谷さいだぁを開けて、何度も喉を鳴らしながら飲んだ。
「いきなり抱きつかれた」
「ふーん、・・・ってええ!?」
順平は口の中にある四谷さいだぁが目の前で無残な姿になるのを必死に堪えた。
「そんで泣きそうな声でバカって言われた。むしろ泣いてた。」
「で、それからどうしたんだよ?」
順平に促されて有里は続きを話しだす。その内容は不思議なもので2人揃って"お手上げ侍"であった。
「見失ったから、寮に帰った。で、ポロニアンモールに行ったか聞いたら風花と一緒に巌戸台に居たって」
「おいおいおい何だよそれ?」
「わかんない」
「この暑さで頭ブッ飛んでんじゃねえの?」
「そうかも。岳羽冬服だったし。」
「うわー・・・それ完全にアレだぜ。怨霊の・・・」
「よかったー、まだ居た。湊君と順平、桐条先輩から伝言!・・・・どしたの?」


09.12.30