「いやー、今日本当晴れてよかったですよねえ。」
「全くだ。雨だと何かと大変だからな。」

「……真。私、真とプロデューサーに引越しの手伝いをお願いしたのよね?」


ダンボール箱から色々な物(といっても千早の家だから物はうんと少ないんだけど)を出しながらこれは千早っぽいだの、こ
れは意外とセンス無いだの意見交換をしていると後ろには蒼い鳥……じゃなくて青筋を立てた鬼が立っていた。
「そんなに量もないし大丈夫だと言ったけど、真がどうしてもっていうからその言葉に甘えたのだけど。」
これはヤバい、と本能的に察したボクとプロデューサーの背中に冷たい汗がタラリと流れた。
「ち、千早!これは……うん、そうだよ!だって今まで千早はどんなに頼んでも部屋の中に入れてくれなかったじゃないか。」
「そうだぞ、真も千早にフラれて悲しい思いをしてたんだよな……うっ……かわいそうに」
思いっきり甘えた声で千早にすがるとプロデューサーもボクに乗っかってくれたみたいだった。
「……あなた達が来ると隣に迷惑がかかるのがわかってるからよ」
「大体ここ765プロの寮じゃないか!少しくらいいいだろ!ちはやのいじわる!おーぼー!」
「そーだ!そーだ!」
千早は何を言っても動じないボク達をとうとう諦めたようで、荷造りの続きを始めた。
「                            」
小さく口が動くのが見えた。千早今、何て言ってたんだろ・・・?

「真おいお前聞いたか!?お前千早に告白されてるぞ!」
「こくは…、いや、告白なら毎日のようにクラスの子達にされてますけど、千早が!?」
「『………引っ越し先の合鍵は真に渡しておくつもりだったのに』 千早も意外と大胆だな、なあ真?」
「えっ…ボク……そんな…」
「もうっ、本気で照れないで!これからの活動について2人で話し合える場所があればいいとずっと思っていてそれがただ私
の家になっただけの事で、それは、その……!」

「うるさーい!千早!アンタ今日引っ越しって言ってたわよね?こんなペースじゃ日が暮れちゃうわよっ!」
ドアが開いて、律子が顔を出す。起きてからそんなに時間が経ってないのか髪の毛が少しいつもより歪んでいるように見えた。
「……ごめんなさい。」
「分かればよろしい。私も手伝うわよ、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」
「ありがとう。」
律子が手伝ってくれるなんて百人力だ、と喜んでいたボクとプロデューサーに千早はキラーパスを出した。
「……あ、そうそう。そこの2人が律子のマグカップ『意外とセンスない』だそうよ。」
「な、なんですって〜!?」
「律子、落ち着け、話せばわかるから、な?」
「問答無用!限定100個のあれを馬鹿にしたわね?待〜ち〜な〜さ〜い!」
「プロデューサー!ここはひとまず逃げましょう!」
「そうだな!」

千早が逃げていくボク達を横目に見て小さく笑いながら、ボクがあげたキーホルダーをダンボール箱にしまっているのが見えた。



雨が降る前に